2024.09.12 | 社会保険

能力不足による解雇のリスクと回避策:企業が注意すべきポイント

長期雇用を目的とした新卒採用に比べて会社の解雇権の行使が通常より、能力不足による解雇は広く認められやすいケースもあります。
ただし、認められるためには次のポイントを押さえておく必要があります。

①雇用契約時に業務に必要なスキルや肩書、業務内容や責任の範囲等を明確かつ詳細に定め、地位特定者として雇用したものの、予定された能力や適性を有さないこと。
②再三の注意や改善の機会を与えたにも関わらず、改善の余地がないこと。

①に関して、雇用契約時に条件等を詳細に定めていたとしても、一定の指導や教育を行ったうえで予定された能力や適性があるかどうかを判断する必要があります。指導や教育を行わずに解雇することは、通常認められません。
能力不足や適性欠如の立証は困難なため、会社としてリスクを抑えたい場合は、解雇ではなく、退職勧奨をすることが考えられます。
予定していた能力や適性がないため管理職としての業務遂行が困難であることを本人に理解していただき、退職勧奨に合意を得ることができれば、解雇と比べてリスクを相当程度下げることができます。
即戦力採用での上記のようなミスマッチを防ぐためには、採用選考時に本人の経験や面接の印象だけで採否を決めるのではなく、管理職としての能力や適性を有しているかどうかを、試験や適性検査を行うなど慎重に採用選考することが望ましいです。

〇ヒロセ電機事件(東京地裁平成14年10月22日判決)
海外勤務の経歴に着目し、原告の語学力や品質管理能力を評価し即戦力として雇い入れたが、雇用時に予定されていた能力を有しておらず、上司から再三にわたる指導や注意を受け、改善の機会が与えられたが能力の向上がみられず、勤務態度も改めないため会社側が解雇を言い渡し、原告がそれに対し不当解雇として訴え、争われた事案。
会社側の言い分が認められ、当該解雇は有効だと判断された。

〇持田製薬事件(東京地裁昭和62年8月24日決定)
マーケティング部を設立し、マーケティング部の部長として地位にふさわしい能力を期待されて雇入れたが、期待された能力を有しておらず就業規則に定めた「雇用を継続させることができない止むを得ない業務上の事情がある場合」に当たり会社側が解雇を言いした事案。
労働者の会議中の提案が全くないことや、マーケティングプランの提言を全く行っていなかったことなどが会社側の期待を裏切る行為であると判断され当該解雇は有効だと判断された。

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