2025.09.29 | 労務管理
正社員との待遇差に要注意!有期契約社員と正社員の境界線とは
有期契約社員の待遇差に是正勧告が増加
大阪労働局は、2023年度(令和5年度)に「パートタイム・有期雇用労働法」に基づいて行った是正勧告の件数が1,143件にのぼったと発表しました。
これは、前年度(2022年度)の約500件から2倍以上に急増しており、短時間勤務者や有期契約社員に対する不合理な待遇差が、これまで以上に問題視されていることを示しています。
待遇差が違法とされる例:慶弔休暇や通勤手当
是正勧告の内容として、特に多く指摘されたのは、正社員と有期契約社員の間で設けられた不合理な待遇差です。主な例は以下のとおりです。
- 制度面での不公平な取扱い
- 正社員には慶弔休暇制度があるが、短時間・有期雇用労働者には制度がない
- 双方に制度があっても、有期雇用労働者のほうが付与日数が明らかに少ない
- 給与・手当面での待遇差
- 通勤手当の支給基準に不合理な差
- 例:正社員は非課税限度額まで支給されるのに対し、有期契約者は月額5,000円までに制限されている
このような待遇差は、雇用形態を理由とした不合理な差別と見なされる可能性があり、是正の対象となります。
合理的な待遇格差とは
一方で、すべての待遇差が違法というわけではありません。法律では、「業務の内容」「責任の程度」「配置の変更範囲」「雇用の継続性」など、合理的な基準に基づいていれば、一定の待遇差を設けることは認められています。
例えば、勤務日数を基準にした通勤手当の支給方法は、以下のような形であれば合理的とされています。
合理的な支給例(通勤手当の場合)
- 週4日以上勤務する労働者:月額定期券の実費相当額を支給
- 週3日以下の勤務の労働者:出勤ごとの日額運賃を支給
このように、「雇用形態の違い」ではなく「勤務日数や実態」に応じた区分であれば、正社員と有期雇用労働者の間に待遇差があっても、法律上は問題ありません。
「同一労働同一賃金」に再注目が集まる
数年前に「働き方改革」の一環として注目された同一労働同一賃金ですが、近年は企業側の意識がやや薄れてきている印象があります。
しかし大阪労働局は2024年、各労働基準監督署に対し、監督時に同一労働同一賃金の実施状況を確認するよう指示しており、対応強化の姿勢が見受けられます。
同一労働同一賃金とは
職務内容や責任、配置の変更範囲などが同じであれば、雇用形態にかかわらず同じ待遇にすべきという考え方です。パートや有期契約社員が正社員と同様の業務をしているにも関わらず、賃金や手当、休暇制度などで大きな差がある場合は、法的に問題となる可能性があります。
特に以下のような待遇項目は注意が必要です。
- 基本給や賞与
- 各種手当(通勤手当、住宅手当など)
- 福利厚生(休暇、研修、食堂利用など)
いま一度、自社の制度が不合理な待遇差を生んでいないかを確認し、必要に応じて見直しを行うことが、今後の行政対応にも備える上で重要です。