2025.08.25 | 労務管理

有給休暇の計画的付与制度とは?導入メリット・デメリットと注意点を解説

有給休暇の計画的付与制度とは

日本では、有給休暇の取得率が低いことが長年の課題となってきました。
個人の判断に委ねられると、職場への気兼ねから休みにくいという状況が起こりやすいため、1987年の労働基準法改正で「計画的付与制度(計画年休制度)」が設けられました。

また、働き方改革関連法によって、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、年5日以上の取得が義務化されています。

計画的付与制度では、労働者が自由に取得できる「5日分」を残した上で、残りの有給休暇日数について企業側が計画的に付与することができます。
前年から繰り越された未消化分も対象にできるため、取得率向上の有効な手段となります。

計画的付与の方法

制度には以下の3種類の付与方法があります。
◯一斉付与方式
会社全体で一斉に有給休暇を取り、休業日にする

◯交代制付与方式
班やチームごとに交代で有給休暇を取る

◯個人別付与方式
従業員の希望を基に取得日を決める

計画的付与のメリット・デメリット

この制度の導入には下記のようなメリットとデメリットが考えられます。

メリット

・有給休暇の取得率を高めやすい
・計画的に業務調整ができるため効率が向上
・有給が取りやすい職場として採用活動にもプラス

計画的付与制度を導入することで、従業員が有給休暇を確実に取得できる環境を整えられます。
職場の雰囲気や人手不足で休みづらいという状況を防ぎ、企業が主体的に取得を管理する仕組みです。
全社的に休暇を一斉に与えることで、有給休暇の取得率が向上します。
繁忙期を避けて計画的に設定すれば、業務効率を高める効果も期待できます。

また、有給休暇をきちんと取れる企業は、従業員にとって働きやすい職場として評価されやすくなりますので、採用活動や企業イメージの向上にもつながります。

デメリット

・従業員が自由に選べる休暇日数が減る
・計画的に決めた日を変更できないため、不満につながる可能性がある

一方、この制度では企業側が休暇日を決めるため、「休みたい日に休めない」という不満を持つ従業員が出る可能性があります。
さらに、一度決めた付与日を変更できない点もデメリットといえるでしょう。
そのため、制度導入の際には従業員への理解を得ることが重要です。

計画的付与制度導入時の注意点

1, 退職予定者への対応

計画的付与で設定された日を取得できずに退職となる場合、未消化の有給が残る可能性があります。
その場合は事前に取得を促すか、退職時に買い取るなどの対応が必要です。

2, 労使協定の締結が必須

計画的付与を導入するには、労働組合または労働者代表との間で労使協定を結ぶ必要があります。
この協定には以下の事項を定める必要があります。
・計画的付与の対象者
・対象となる有給休暇日数
・付与の具体的な方法
・有給休暇を持たない従業員の扱い
・付与日変更のルール

また、従業員数10名以上の事業場では、就業規則に明記し「就業規則変更届」を労働基準監督署に届け出なければなりません。

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