2025.03.28 | 労務管理
過重労働が招く健康リスクと企業が取り組むべき対策とは?
過重労働とは
過重労働とは、長時間の残業や過度な業務負担によって、心身に深刻な影響を及ぼす働き方を指します。近年、週60時間以上働く人の割合は以前より減少しているものの、いまだに全体の5%以上を占めています。さらに、脳や心臓の病気、精神障害で労災が認められる件数も高止まりしており、強いストレスを原因とするうつ病などの増加が問題視されています。そのため、労働環境を改善し、過重労働を防止する取り組みが急務となっています。
過重労働が企業に与えるリスク
過重労働が常態化している職場は、採用活動の面でも不利になりかねません。万が一、過重労働が原因で労災認定が下りれば、損害賠償責任が問われる可能性もあります。労働基準法では、そもそも勤務時間に制限を設けていますが、特別条項付きの36(サブロク)協定を結んでいる場合でも、月45時間を超える残業が認められるのは年間6か月までと定められており、しかもその適用は臨時的な事情に限られます。
長時間労働と労災認定基準
労災認定の基準においては、長時間労働と健康被害の因果関係を具体的な「時間数」で示しています。特に、脳や心臓の病気だけでなく精神障害との関係も考慮され、以下のような長時間労働が“特別な出来事”として評価されます。
「特別な出来事」としての極度の長時間勤務
- 発病直前の1か月でおおむね160時間以上の時間外勤務
- 発病直前の3週間でおおむね120時間以上の時間外勤務
出来事としての長時間労働
発病前1~3か月の長時間勤務が“出来事”として評価されるケースです。
- 発病直前の2か月間、毎月おおむね120時間以上の時間外勤務
- 発病直前の3か月間、毎月おおむね100時間以上の時間外勤務
他の出来事と関連した長時間労働
転勤などの大きな変化に続いて月100時間程度の残業が発生した場合、心理的負荷を強める要因として評価されるケースです。
- 転勤後に新しい業務を任され、月100時間程度の時間外勤務を行った場合
上記の時間外労働の数値はあくまでも目安であり、これに達しない場合でも心理的負荷が「強」と判断されることがあります。
過重労働防止のための対策
近年は働き方改革も進んでいますが、長時間にわたる過重労働による健康障害は依然として深刻です。法律としては「労働安全衛生法第66条」で長時間労働者への面接指導を義務付け、厚生労働省の「過重労働による健康障害防止のための対策の手引き」では、以下のような取り組みを推奨しています。
時間外・休日労働時間等の削減
労働基準法第36条に基づき、1か月あたり45時間を超えて時間外・休日労働をさせる「特別な場合」を具体的に定めて労使協定を結びます。仮に特別な場合を設定しても、企業はなるべく1か月あたり45時間以下に抑えるよう努力が必要です。ノー残業デーやノー残業ウィークの導入を検討することも効果的です。
年次有給休暇の取得促進
労働基準法第39条第7項では、年5日間の年次有給休暇を確実に取得させる義務があります。さらに有給休暇を取りやすい職場環境づくりや計画的付与などを活用し、休暇取得を促進します。
労働時間等の設定の改善
労働時間等設定改善法に基づき、勤務終了から次の始業まで一定時間を空ける「勤務間インターバル制度」や深夜業の制限などを実施し、労働者が十分に休める環境を整備します。
労働者の健康管理にかかる措置の徹底
健康診断を適切に実施し、長時間残業を続けた従業員には面接指導を実施します。ストレスチェックやメンタルヘルスに関する研修も活用し、社内外の資源を使って健康管理体制を充実させましょう。
健康診断結果に基づく事後措置の実施
健康診断で異常が見つかった場合は、医師の意見を取り入れ、必要な措置を取ります。従業員が適切な事後措置を受けやすい環境づくりが大切です。
労働基準監督署の是正勧告とは?
過重労働で特に問題となるのは、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性です。勧告を受けると、期日までに改善計画や報告書を提出しなければなりません。もし対応が不十分だと、今後も指導対象としてリストに残り、何度も対応を迫られるおそれがあります。対応に行き詰まった場合は、是正勧告に詳しい社会保険労務士に相談するのも有効な方法です。こうした専門家のサポートを受けながら、過重労働の防止策をしっかりと実施していきましょう。