2024.11.04 | 労務手続き
社会保険はどうなる?2箇所以上で働く人の社会保険手続き
複数の事業所で働く場合の社会保険手続き方法
複数の勤務先で働く場合、社会保険の手続きや保険料支払いが通常と異なるため、特定の手続きが必要になります。今回は、二つ以上の事業所で働く人が、どのように社会保険の手続きを行えばいいのか、その概要や保険料の取り扱いについて詳しく解説します。
社会保険における「二以上事業所勤務届」とは?
複数の職場で働く被保険者(社会保険の加入者)は、すべての職場で社会保険に加入する必要があります。そのうえで、主要な勤務先を一つ選び、「二以上事業所勤務届」を提出する義務があります。この手続きは、被保険者が自身で行うものです。
「二以上事業所勤務届」が必要な対象者
対象者は主に、法人の役員を兼務する方となりますが、中には、社会保険適用拡大の影響で、週あたりの所定労働時間が20時間以上の勤務を、2か所以上の事業所で行っているような労働者でも、「二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。よって、下記が対象者となります。
・複数の法人の役員を兼務している方
・週20時間以上の勤務を複数の職場で行っている方
手続きに不安がある場合は、勤務先に相談し、正確に対応しましょう。
メイン事業所の選択が必要なケース
「二以上事業所勤務届」を提出する際には、複数の職場の中から主たる事業所(メインの勤務先)を選ぶ必要があります。以下の条件に該当する場合、主たる事業所を決定する必要があります。
・一方の職場の保険が「全国健康保険協会(協会けんぽ)」で、もう一方が「健康保険組合」の場合
・両方の職場の保険が「健康保険組合」である場合
・両方の職場が「全国健康保険協会(協会けんぽ)」である場合
社会保険料の計算方法
複数の職場で社会保険に加入する場合、保険料は各職場での報酬額に応じて按分されます。
保険料計算の一例
A社とB社を例として、それぞれの保険料計算方法をご説明します。
▼A社・B社での月収
A社:月収30万円(健康保険組合に加入)
B社:月収20万円(協会けんぽに加入)
▼A社を主たる事業所として選択した場合の手続き
①B社として資格取得届を日本年金機構へ提出(厚生年金・健康保険の取得手続き)
②A社の健康保険組合に「二以上事業所勤務届」を提出(主たる事業所をA社と指定)
③B社管轄の年金機構事務センターへ「二以上事業所勤務届」を提出(選択事業所をA社として記載)
社会保険料の決定通知
手続き後、A社の健康保険組合およびB社管轄の年金事務センターから保険料決定通知が届きます。標準報酬月額は両社の月収を合算した50万円となり、以下の計算式で各社の保険料が算出されます。
A社:標準報酬月額50万円 × 保険料率 × 30万円/50万円
B社:標準報酬月額50万円 × 保険料率 × 20万円/50万円
まとめ
複数の勤務先で働く際、社会保険の加入手続きや保険料の計算方法は通常と異なるため、各事業所や年金機構への手続きを正確に行うことが重要です。また、保険給付を受ける際には、選択した主たる事業所の健康保険が適用されるため、事前に必要な手続きを確認し、スムーズに対応しましょう。