2024.07.08 | 労務手続き

引き抜き行為の違法性と予防策とは?退職後の従業員勧誘に潜むリスクを解説

引き抜きは独立起業、あるいは他社に転職した元従業員によって行われます。
勧誘された従業員が転職した場合、仮に引き抜きであったとしても直ちに違法になるわけではありません。

違法性を帯びるかどうかは下記のような事情が考慮されます。

・引き抜いた従業員数や地位
・会社の損害や影響
・計画性、悪質性

当然ですが、前職場に損害を与えるような目的で大量に引き抜き行為を行った場合、違法性は高くなります。
一方、元から会社に不満を持っていたり転職を考えているような在職中の従業員に対して、辞めた元従業員が「うちの会社に来る?」といった一般的な勧誘程度のものであれば違法性は低くなると考えられます。

■在職中

 在職中、従業員は雇用契約に付随する誠実義務(職務に忠実にあり会社の不利益になるような行為をしないこと)を負っています。
ですから退職予定の従業員が在職中から引き抜き行為をすることは、この誠実義務に反します。
もしこの誠実義務に反して引き抜き行為をし会社に損害を与えたような場合は、不法行為により損害賠償請求をすることが可能です。

■退職後

入社時や就業規則の定めだけにとどまらず、退職時に誓約書や競業避止義務契約を提出させる企業も多くあります。
しかし競業避止義務自体は全てが有効となるわけではなく、その内容に合理性が求められます。
引き抜き行為があったとしても、それが単なる勧誘程度のもので、背信性や大きな損害がなければ違法性を問うことは難しいかもしれません。
仮に退職時に競業避止義務契約をしておらず就業規則にもそのような定めがない場合は競業避止義務は負いません。
しかし競業避止義務を負っていない場合でも、その引き抜き行為が計画的・背信的で会社に損害を与えていれば、社会的相当性を逸脱しているとして違法性が認められやすくなります。

■予防策

・入社時
入社時に就業規則等を遵守する旨の誓約書を取りましょう。

・就業規則
就業規則に競合避止義務として下記の内容を記載します。
  ・在職時だけでなく退職後も同様であること
  ・引き抜き禁止と具体的に記載すること
  ・懲戒処分があること
  ・退職金不支給または減額があること

・退職時
 退職時にも誓約書や競業避止義務契約を取りましょう。入社時と同様に、個別に書面を交わすことにより、就業規則だけで縛るよりは抑止力につながります。

・その他
実際のところ、引き抜きの勧誘を受けてそれに合意するような場合、勧誘された従業員は元々会社に対して不満を持っていることが大半です。会社を良いと思っているのであれば、少しくらいの勧誘では転職しません。
そして、引き抜き行為自体は隠れて行われますから完全に止めることは難しいものです。
勧誘をされても従業員をつなぎとめられる関係構築を作っていくことが何よりも重要です。

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