2024.06.18 | 労務手続き
介護離職を防ぐために企業ができること:短時間勤務制度や支援策の現状
■増える「ビジネスケアラー」とは?
「ビジネスケアラ―」とは、仕事をしながら家族等の介護を行う人を指す言葉で、経済産業省によると、2030年をピークに318万人に達すると推計されています。
また、これによる経済損失は約9兆1,792億円にのぼるともいわれています。
介護離職防止の企業向けガイドライン
厚生労働省は、会社員が家族等の介護で離職するのを防ぐ目的で、企業向けの指針をまとめると発表しました。
この指針には、企業が介護休業や休暇制度、介護保険サービス等について対象従業員に周知させたり、外部の専門家と連携し、介護事業所に提出する書類作成を肩代わりしたり、相談窓口を設置したりと、従業員の介護離職を防ぐ取組みを促す内容が盛り込まれる予定です。
介護のための短時間勤務制度がある会社は約8割
人事院の調査によると、介護のための短時間勤務がある企業は78.4%となっています。
そのうち、短縮する週当たりの時間数の上限や、短時間勤務を行える期限の上限を設けている企業はいずれも88%以上を占めています。
介護離職防止において企業が求められること
育児・介護休業法に基づいて、既に休業・休暇制度を設けている企業は大多数だとは思いますが、従業員に周知されていなかったり、運用がうまくいっていなかったりするケースもあるようです。
今年度中にも、介護離職防止の企業向けガイドラインが整備される予定ですので、ガイドラインが出て慌てて対応することのないよう、自社の制度をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
■仕事と育児の両立支援に関する意識・実態調査
仕事と育児の両立支援制度に対する意識や実態を把握するために、日本労働組合総連合会(連合)が実施する「仕事と育児の両立支援制度に関する意識・実態調査2023」の結果が公表されました。
小学生以下の子を持つ20歳~59歳の働く男女1,000名が回答したこの調査は、仕事と育児の両立のために何が求められているのか、様々なヒントを与えてくれます。
調査結果のポイント
「仕事と育児の両立のために利用したことがある両立支援制度」を問う質問では、育児休業(41.9%)や短時間勤務(16.3%)が挙げられる一方で、「利用したことのある制度はない」は47.8%、男性では58.4%にのぼります。
その理由の1位は「利用できる職場環境ではなかった」というものです。
なぜそのように思ったのか、という質問には「代替要員がいなかった」(39.6%)が最も多く、「職場の理解が低かった」(33.7%)、「言い出しにくかった」(26.2%)、「自分にしかできない業務を担っていた」(20.3%)が続きました。
代替要員がいない、理解が低いという職場では、両立支援制度を利用しづらいという現状がうかがえます。こうした状況は採用活動においても不利に働き、いっそうの人手不足を生み出す負のスパイラルへと繋がってしまいます。
賞与支給日の在籍要件
賞与の支給について、就業規則により「賞与支給日に在籍していること」を支給要件と定めている会社が多くあると思います。例えば、賞与の支給対象期間が1月から6月として、支給日を7月20日とする場合、6月末で退職する社員から、支給対象期間はすべて勤務していたわけなので、会社は賞与を支払う義務があると主張することも考えられます。
そう言われると支払わなければいけないような気もしてきますが、支払わない場合は法違反となるのでしょうか?
支給対象期間はすべて勤務していたわけですから、それに対しての賞与をもらう権利はありそうに思いますが、規定により賞与支給日に在籍していることとする要件を定めている場合は、支給日に在籍していない限り賃金請求権は発生しませんので、法違反とはなりません。賞与は、支給する義務がある通常の労務提供に対する賃金ではなく、支給する場合のルールをどのように決めるかは会社の自由なのです。従って、支給日には退職している社員から賞与の支給を求められても、きっぱり断って大丈夫です。
ただし、あくまで就業規則等で規定して周知されていることが必要ですので、ご注意を。