2025.08.02 | 労務管理
「就職祝い金」は法律違反?
人材獲得競争の過熱と求人市場の変化
ここ数年、求人市場は売り手優位の状況が続いています。2013年には有効求人倍率が1.0倍を超え、コロナ禍の影響で一時的に下がった2020年8月も1.04倍と底を打ちましたが、2023年時点では1.32倍まで回復しました。
求人数が求職者数を上回る状態が続き、多くの企業が深刻な人手不足に直面しています。
この人材獲得競争のなか、企業や人材紹介会社は他社に先んじて人材を確保しようと、あの手この手の採用手法を模索しています。
就職祝い金は違法になることも
採用活動の一環としてよく耳にする「就職祝い金」ですが、実はこれは法令違反となる場合があります。
職業安定法では、求職者に金銭などを提供して応募を促す行為を禁止しており、「就職祝い金」や「入社ボーナス」のような制度は、この規定に抵触するおそれがあります。
厚生労働省の調査によると、2023年8月から2024年5月にかけて行われた監督指導の結果、調査対象の事業者の約6割に職業安定法違反が認められました。
特に「就職祝い金」に関する指導件数は25件にのぼり、実際に行政からの指導が入ったケースも報告されています。
就職祝い金だけではない!人材紹介事業者によるNG行為
さらに問題となっているのが、人材紹介事業者による「転職の勧誘」です。
職業安定法では、紹介日から2年間は、紹介した労働者に対して再度転職を促すことを禁止しています。
これは、紹介を受けた企業にとっての人材流出リスクを避けるための措置です。
紹介手数料を目的に転職を煽る行為は、企業の信頼関係を損ない、採用活動の健全性を損なうことになります。
企業が意識すべき対応ポイント
今後は、以下の点に注意して採用活動を行うことが重要です。
- 「就職祝い金」などの金銭提供を行わない
- 紹介事業者との契約内容や運用方法を定期的に見直す
- 法改正や指針の強化に常にアンテナを張る
厚労省では省令の改正や運用指針の見直しも検討しており、採用活動への影響は今後さらに広がる可能性があります。
まとめ
求人市場が売り手優位である今こそ、企業は法令遵守を前提とした採用活動を行うことが求められています。
「就職祝い金」など安易な方法に頼るのではなく、長期的な信頼関係を築ける採用体制の構築が重要です。